2009-01-01から1年間の記事一覧

 瞑想と闘争

売れに売れているこの本だが、世間の評価は、毀誉褒貶真っ二つに割れているといったところか。あるものは物語る力の減退を説き、またあるものは物語の魅力を訴える。オウム真理教の尻尾を掴んで社会の暗部を引きずり出したと評価するものがいるかと思えば、…

足と声

白いシーツの上に仰向けに寝た妾と交わるオレがいる。 ピンクになまめかしく光るアメリカ芙蓉の花弁をオレの舌が慈しんでいる。繊細な被膜と大胆な粘膜の上をオレの舌は丁寧に伝い、匂いと感触を巻き取っていく。だが女は大の字のまま動かない。 オレは固ま…

錨とロープ 

波止場を静かに漂う一本のロープ。ぎらぎらと照りつける日の光は、たゆたう水面の譜面の上で踊る。サンダンスに促されてロープはうねる。リズムを刻むように静かにうねる。引っ込み思案の海蛇のようにただうねる。 テトラポットに佇む一丁の錨。沖からはるば…